Research

     

研究分野


天然物有機化学・生物有機化学・生化学

様々な生物が生産する生理活性天然有機化合物は、多種多様な化学構造と生物活性を有し、人類の生存に不可欠な医薬等を提供するだけでなく、化学、生命、医薬等の基礎科学を画期的に飛躍させる決定的な力を持っています。特に微生物は医薬品となる化合物(抗生物質、抗がん剤、抗ウイルス剤、 血中コレステロール低下剤など)の多くを生産し、また、産業上重要な化合物、酵素などの天然資源の宝庫と言われています。このような微生物の能力を最大限に利用することを目的とし、次の基礎的な研究を行っています。


○生理活性天然物、特に微生物由来の二次代謝産物の探索、構造決定及び生合成解析
○生理活性天然物の作用機作
○酵素の精密機能解析

 

 

生合成研究のこれまでとこれから(2015年日本化学会第95春季年会シンポジウム「天然物化学研究の最前線:生合成とケミカルバイオロジーの新展開」の報告書より)

           


           

           

          アミノグリコシド抗生物質の生合成研究

           

アミノグリコシド抗生物質 は、細菌のリボソーマルRNAに特異的に結合してそのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑制する抗生物質として有名な古典的抗生物質です。 その構造は、アミノサイクリトールを中心アグリコンとする疑似オリゴ配糖体であり、結合糖の種類と結合様式により多種多様の構造を有するア ミノグリコシド抗生物質が微生物培養液から単離されています。
当研究室では、微生物でしか見られない特異アミノサイクリトールの生合成機構と、配糖化による構造多様化の2点に絞り研究を進めております。これまでにネオマイシンとブチロシン生合成に関して遺伝子・酵素レベルでそのほとんどを解明しました。

 

            

 

放線菌由来ポリケチドの生合成研究

 

ポリケチド化合物は、数ある有用天然物の中で最も多くの化合物を輩出している化合物です。その名の通り、酢酸やプロピオン酸由来のβ-ポリケトンを前駆体と する化合物の総称で、伸長鎖ユニットの種類と、伸長回数、β位の還元度、環化・芳香環化などの組み合わせにより多種多様な構造が存在します。特に放線菌由 来のポリケチドは構造と生物活性の多様性に富んでおります。
当研究室ではまず、特徴的な生理活性を有するポリケチド化合物の構造に興味を持ち研究を開始し、各種分析機器を駆使して化学構造決定し、また、取り込み 実験によりその前駆体を明らかにしてきました。さらに、その生合成遺伝子をクローニングして、コードされる生合成酵素の機能解析を進めております。中でも マクロラクタムポリケチド抗生物質の生合成研究が進んでおり、遺伝子クローニングは言うまでもなく、ポリケチド開始基質の生合成の解明、遺伝子破壊による新規物質生産、ラクタム化酵素ドメ イン・糖転移酵素の機能を解明しました。また、マクロラクタムポリケチド抗生物質の生合成に関わる種々の酵素の結晶化に成功し、分子レベルでの詳細な情報も得られております。

      

 

構造的に特徴的な抗生物質の生合成研究

 

微生物は抗生物質など様々な構造と有用な生理活性をもつ二次代謝産物をつくり出すことで知られています。我々は、その中でも特徴的な構造を持つ抗生物質に着目し、それらが微生物内でどの様に生合成されているかの仕組みを明らかにし、さらに新たな二次代謝産物の生産に役立てたいと考えています。