未知の光反応を発見することは、基礎科学への貢献に加え、新たな物質群の創成につながる可能性を秘めている。
我々は、ホスフィン配位子を有するレニウム錯体fac-Re(bpy)(CO)3PR3について、光を照射することによって、 ホスフィン配位子のトランス位に位置するカルボニル配位子を選択的に置換できることを世界で初めて見いだした(下式)。 その反応機構を詳細に検討することで、「レニウム錯体の光化学」に新しい知見を加えることができた。さらにこの光反応には、 種々の配位子をレニウム錯体に導入できるという応用的利点がある。この発見を契機に、多様なレニウム単核及び多核錯体の合成が、 この光配位子交換反応を活用して行われるようになった(項目(2)参照)。
現在我々は、レニウム錯体に加え、低周期・高周期遷移金属錯体の光反応化学についても研究を進め、 「金属錯体の光化学」に新たな展開を切り開いていくことを目指している。