4)二酸化炭素固定化反応の開発

二酸化炭素を遷移金属錯体を用いて活性化し、有機化合物へ効率良く取り込むことのできる優れた合成反応の開発は、現在の有機合成化学における非常に重要な研究課題の一つです。これまでの研究の多くは化学量論量の遷移金属錯体(特にニッケル錯体)と二酸化炭素分子を用いたメタラサイクルを経由するカルボン酸誘導体の合成、あるいは超臨界二酸化炭素の触媒的水素化によるギ酸誘導体の合成等に限られており、触媒量の金属錯体により炭素−炭素結合生成を伴いつつ効率的に二酸化炭素を取り込んだ例は極めて少ないのが現状です。

このような状況をふまえ我々は、遷移金属錯体を利用して炭素—炭素結合生成を伴う二酸化炭素固定化の触媒的な手法を開発することを目的として研究を行っています。これまでに我々が開発した反応として、ロジウム錯体を用いたアリールボロン酸エステルのカルボキシル化反応、新たに設計合成したPincer型パラジウム錯体を用いた炭化水素からのカルボン酸合成が挙げられます。さらに最近ではパラジウムやロジウム触媒を用い、通常は不活性な炭素—水素結合を切断し、これをカルボキシル化することに成功しております。

Selected Recent Publications

C. Zhu, J. Takaya, and N. Iwasawa, Org. Lett., 17, 1814-1817 (2015).

T. Suga, H. Mizuno, J. Takaya, and N. Iwasawa, Chem. Commun., 50, 14360-14363 (2014).

K. Sasano, J. Takaya, and N. Iwasawa, J. Am. Chem. Soc., 135, 10954-10957 (2013)

J. Takaya, K. Sasano, N. Iwasawa, Org. Lett. 13, 1698-1701 (2011).

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