6)ボロン酸エステルの動的自己組織化に基づく高次機能の開拓

ボロン酸と1,2-ジオールを混合すると可逆的かつ速やかに環状のボロン酸エステルが生成します。我々はこのボロン酸エステル形成を利用し、適切な基質の組み合わせにより高次構造が自発的に組み上がるような反応の開発を行っています。

また我々は、得られた構造体を利用した独創的な機能創出にも取り組んでおります。例えば複数の分子を内部に取り込む事ができるものや、小分子の包摂・放出を可逆的に制御できるシステムを開発しました。さらに最近では触媒的分子変換を進行させる大環状ボロン酸エステルの開発を行っています。


この研究は、最終的には動的自己組織化に基づいて高次機能を創出し、新たな機能性触媒や機能性材料への道筋を作ることを目指した研究です。例えば最終的には次のような『分子工場』のようなものを実現したいと考えています。すなわち、基質を認識してその変換に必要な触媒がさまざまなポリオールとポリボロン酸の混合物の中から自発的に自己組織化され、対応する分子変換が行われる。次にまた、ここで得られた生成物の次の変換に必要な触媒が新たに自己組織化され、次の分子変換が行われる。これを順次繰り返すことによって最終生成物ができあがるというものです。これはゲスト分子に応じてホスト分子が自在に形状を変化させるという動的分子認識の特徴を最大限生かしたものであり、いわば『分子工場』とも言うべき物質合成の究極的な形ということができます。

Selected Recent Publications

K. Ono, K. Johmoto, N. Yasuda, H. Uekusa, S. Fujii, M. Kiguchi, and N. Iwasawa, J. Am. Chem. Soc., 137, 7015-7018 (2015).

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K. Ono, R. Aizawa, T. Yamano, S. Ito, N. Yasuda, K. Johmoto, H. Uekusa, and N. Iwasawa, Chem. Commun., 50, 13683-13686 (2014).

Y. Kikuchi, H. Takahagi, K. Ono, and N. Iwasawa, Chem. – Asian J., 9, 1011-1005 (2014).

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