金属間化合物

金属間化合物とは、2種類の金属からなる化合物で、合金の仲間です。図1に示すように、通常の合金は元の金属のどちらかの構造を保持しながら、 もう一方の金属原子がランダムに置換・侵入した「固溶体」であり、その組成はある幅の中で可変です。 一方、金属間化合物は、元の金属とは全く異なる結晶構造をもつ「化合物」であり、簡単な整数比の組成をもちます。 固溶体合金は周期表上で近くにある元素同士により形成され、金属間化合物は離れた位置にある元素同士により形成されます。

金属間化合物では、①元の金属と異なる特有の結晶構造をもつこと、 ②電子状態が大きく異なる元素同士が規則的に配列していることにより、単体金属には無い特異な性質を示すものが知られています。 例えば、水素吸蔵(LaNi5)、超伝導(Nb3Sn)、形状記憶(TiNi)などが有名です。

小松研では、「特異な結晶構造と電子状態をもつ金属間化合物は、触媒としても単体金属とは全く異なる性能をもつはずだ」と考え、 金属間化合物の表面の性質である触媒特性について研究を進めてきました。 そして、種々の金属間化合物が単体金属より優れた触媒性能をもつことを明らかにしています。 例えば図2に示すように、CoHf2はメタンのCO2リフォーミングにおいて、 Niより高いCO2転化率(反応速度)を100時間にわたって示しました。 また、Pt3Coをシリカゲル表面に固定した触媒は、水素中微量COの選択酸化(PROX反応)において、 Pt触媒が全く働かない140℃以下の低温で高いCO転化率を示しました。

小松研で用いている金属間化合物触媒の形状は、図3に示す2種類です。 バルク触媒は、金属同士をアーク熔解により液化・混合し、冷却後10~30μm程度に粉砕したものです。 担持触媒は、シリカゲルやアルミナの表面上で2種の金属を反応させ、数nm程度の非常に小さい化合物微粒子を形成させたものです。

また小松研では単に高性能な触媒を開発するだけでなく、「なぜ優れた触媒特性が発現するのか」に対してのアプローチも行っています。 例えば、上で示したPt3Co上でのCO選択酸化の系では、赤外分光法や速度論的検討といった物理化学的手法により 「Co原子が酸素の吸着サイトとして機能する」ことが活性向上の要因であることを見出しています(図4)。

このようにして得られた特異な触媒作用に関する分子レベルでの知見は、より高性能な触媒の開発にフィードバックされます。