研究内容

概要

 レーザー光照射で生成する励起種(分子、ラジカル、錯体、クラスター)の電子振動回転状態と反応ダイナミクスの解明、高粘度などの特徴を有するイオン液体の物性の解明などを行っている。新規な光反応の発見と機構解明、レーザー分光法の開発と応用、大気組成変動の将来予測モデルの確立とその検証に必要な反応・分光データの蓄積など、物理化学(分光と反応)と環境、宇宙、生命など我々の知的興味に係わる諸問題を基礎科学の立場から解き明かす研究を行なっている。

研究例

1.基本分子の分光と光励起状態ダイナミクスを調べた。二酸化窒素で、理論予測されていた光学禁制状態を実験で初めて発見し、その分子構造を明らかにした。アセチレンで、トランス-シス異性化の反応障壁近傍のポテンシャル上で起る分子の複雑な運動を分光学的に捉え解析した。
2.ベンジルやベンゾフェノンケチルなど基本的なラジカルの分光と光励起状態ダイナミクスを明らかにした。宇宙空間でその存在が予想されているFeN、およびFeC等遷移金属を含む2原子ラジカルの分光測定に成功した。
3.レーザー制御の液体反応と固体反応を、過渡吸収法、時間分解ESR法、FT-IR法などで解析し、その反応および緩和機構を明らかにした。
4.大気反応で鍵となるラジカルの計測法を開発した。新しいタイプの「接触分子の光反応」を解明した。
5.イオン液体の極性がアルコール程度であり、正負イオンが独立に溶媒和すること、溶質回転時間が分子により1-100 ns程度であることなどを明らかにした。
6.ESRスペクトルの詳細な解析から、塩化物イオンのイオン液体では塩化物イオンがカチオンとクラスター形成することを推測した。

【最近の論文から】
M. Tsuge, K. Tsuji, A. Kawai, and K. Shibuya "Infrared spectroscopy of ozone-water complex in a neon matrix" J. Phys. Chem. A, 111(18), 3540-3547 (2007)
A. Kawai, K. Shibuya "Charge-Transfer Controlled Exchange Interaction in Radical-Triplet Encounter Pairs as Studied by FT-EPR Spectroscopy" J. Phys. Chem. A, 111(23), 4890-4901 (2007)
N. Akai, A. Kawai, K. Shibuya "First observation of the matrix-isolated FTIR spectrum of vaporized ionic liquid: and example of emimTFSI, 1-Ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide" Chem. Letters., 37(3), 256-257 (2008)