多電子励起分子のダイナミックス

toroidal analyzer

多電子励起分子のダイナミックス

分子軌道近似とBorn-Oppenheimer近似が、破綻する系として注目を集めている多電子励起分子のダイナミックスの研究です。多電子励起分子とは、2個以上の電子が同時に励起した分子のことです。イオン化ポテンシャル以上の内部エネルギーを有していながら一時的にイオン化せずに存在する中性励起分子で、当然きわめて活性に富んだ10-16s程度の短寿命の分子種です。多電子励起分子は、反応中間体として重要な役割を果たしているだけでなく、基底状態にある分子からは想像もできないようなダイナミクスを見せることでも注目されています。

私たちは、この多電子励起分子の不思議な性質を解明する研究を進めてきました。例えば、電子と光子という2種類の量子ビームを利用して、独自の究極の多電子励起分子の観測法を開発し、どのようにして多電子励起分子が生成するのか研究を行い、分子軌道法では説明のつかない結果を次々と発見しています。分子軌道法は、しょせん近似ですから、どこかで破綻するはずですが、分子軌道法ほどの良く使われる近似の破綻は、やはり大事件です。このように多電子励起分子は、きわめて魅力に富んだ研究対象です。我々は、多電子励起分子を対象に、化学の根本原理に一歩一歩、着実に迫っています。

  • 放射光で実験中
  • 装置の心臓部

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