2)第六周期遷移金属含有イリドを経由する触媒的多環性複素環合成法

第六周期遷移金属錯体によるアルキンの求電子的な活性化に基づいて、新たに多機能性反応活性種を創製し、これを利用して触媒的多環性複素環化合物合成法の開発を行っています。例えば、o-アルキニルフェニルカルボニル化合物に対しビニルエーテルの存在下で触媒量のタングステン錯体を作用させると、含酸素多環性化合物が高い立体選択性で得られることを見いだしました。この反応は、求電子的に活性化されたアルキンに対するカルボニル酸素の6-endo選択的環化を利用して多機能性活性種、タングステン含有カルボニルイリドの創製を実現したものであり、これはイリドとしての性質とカルベン錯体としての性質を併せ持ち、従来にない分子変換を可能にする興味深い化学種です。この反応の反応機構に関しては計算化学的手法による検討も行っています。

さらに金属含有アゾメチンイリドの創製にも成功し、マイトマイシン等の有用生理活性物質の基本骨格である三環性インドールを一挙に、かつ収率良く与えることも見出しています。