東京工業大学 理学院 化学系School of Science, Tokyo Institute of Technology

リング・ケージ グループ

 ベンゼン環が3つ繋がったアントラセンは、そのもの自体、非常に興味深い芳香族化合物です。私達はこのアントラセンを環状に連結させた大環状化合物群に着目し、有機化学の新たな知識の探究と理解の深化を行っています。例えば、6つのアントラセンを環状に連結させたディクス状分子は、水素原子とパイ電子との相互作用で球状のフラーレンC60を捕捉し、非常に珍しい土星型錯体(ナノ土星)を形成することが分かりました。また、アントラセンを3次元的に連結したケージ分子では、フラーレンの捕捉力がさらに増大します。本来、水素原子とパイ電子の相互作用は弱いと考えられてきましたが、適切に設計された分子では、その相互作用を効果的に発揮できることを実証しました。

ring_cage

ヘリセン グループ

 アントラセン同士を「辺」で連結したらどうなるでしょうか?3枚のアントラセンを辺で連結していくと、水素原子同士と芳香環同士の立体反発により平面構造ではなく「らせん構造」の[3]HAを形成することが分かりました。らせん構造の分子は「ヘリセン」と呼ばれ、近年盛んに研究されている分子群です。驚くべきことに、両末端に嵩高い官能基を導入すると、右巻き(P体)と左巻き(M体)の鏡像異性体を室温で完全に分離することができ、巻方向に応じた特殊な発光(円偏光発光)を強く発することが判明しました。さらにアントラセンの枚数を増やし、らせん構造を伸長させた[4]HA[5]HAの合成にも成功しました。これらの知見を基に、さらに強い円偏光発光性を有する光学活性分子の創製に挑戦します。

helicene

ルビセン グループ

 ルビセンとは、名前のごとく、ルビーのような美しい赤色を持つ多環式芳香族化合物です。ルビセンは、構造的にフラーレンC70の部分骨格でもあるため、ナノカーボン材料への応用展開が期待されている化合物です。従来、ルビセンを合成するためには、高活性試薬や高温条件が必須でした。これに対して私達は、アントラセン誘導体に安価な反応剤(酸と酸化剤)を作用させると、室温かつわずか数分で、簡単にルビセンを合成する手法を開発しました。最近は複数のルビセンを単結合や縮環構造で連結させることで、5員環を含むナノグラフェンの開発に挑戦しています。

rubicene

超分子 グループ

 頑丈な共有結合で結ばれた有機分子に対して、超分子化学では、複数の有機分子が弱い化学結合で結ばれた「大きな集合体」を取り扱います。通常の有機分子が「個」としての性質を持つなら、超分子は「集合体」としての性質を発現します。私達はこれまでに、リン化合物と親水性分子を「混ぜるだけ」で連結し、単純なリン化合物を簡単に両親媒性分子に変換する新技術を開発しました。最近では、ピンセット状の有機分子に「天然ウイルスの構築原理」を組み込むことで、前例のない環状・球状の集合体を構築しました。さらに、金属イオンとの配位結合を活用し、2つのケージ分子が絡み合った巨大なインターロックケージ集合体も発表しました。私達はこれらの独自技術と知見を駆使し、モノマーの性質を最大限に活かした高機能性超分子の開発に挑戦します。

supramolecules

Highlighted Molecule

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