研究内容

-ナノ空間を速度論的に作る研究-

従来の配位子と金属イオンから形成される細孔性ネットワーク錯体は、熱力学的支配のもと自己集合の原理に基づいて合成されてきました。実はその過程の中には様々な中間体が存在しています。その中間体を利用することにより、熱力学的支配下の生成物とは異なる構造体を構築することができます。

また、速度論的に構造を組み上げることにより、原理的に細孔内にゲストと相互作用するサイトを生成することができます。そのような細孔体は、従来には見られないような吸着・分離・反応・物性などを示すことが期待されます。

現在、独自の配位子を設計合成して、酸化還元特性を有するユニークな細孔体の研究を行っています。

       
  

-ナノ空間を利用した反応-

細孔体を合成するだけでなく、細孔体のナノ空間内で様々な反応を検討し、メカニズムの研究を行っています。 特に、我々の主な分析手段の一つであるその場観察構造解析法を利用し、反応を直接「見る」研究を行っています。

-ナノ空間の物性研究-

細孔性ネットワーク錯体は、通常バンドギャップが大きく絶縁体ですが、配位子の酸化還元電位を適切に制御することにより電導性を示すようになります。そのような配位子を金属イオンで無限にネットワーク化することで出現する基礎的物性の研究を行います。特に、物性の検討は,固体状態の電気化学測定に基づくため,解釈がとても難しいですが、様々な手法と組み合わせることによりチャレンジしています。

-ナノ空間を利用したデバイス設計-

ナノ空間を有する結晶性材料は、その表面積の広さからシグナル強度の増強による高感度化や基質選択性などが期待できることからデバイス材料として有望です。特に、我々が研究している細孔体は酸化還元特性を有することから電導性を示します。しかも、構造や方向性によって電導度が大きく変化する異方性を示します。これらの特徴を生かして、細孔体で形成された薄膜を作製することにより新しいタイプのセンサーの開発を目指しています。また、新しい設計指針を提供できるように、センシングのメカニズムを分子レベルで検討する基礎的な研究を行っています。

-結晶相やアモルファス相の未知構造研究-

物質を合成した後は、回折法による構造決定を行います。また、準安定な構造はよく相転移を起こし、大きな構造変化とともに物性も変化します。構造解析の対象は、単結晶、結晶性粉末、アモルファスと様々です。そのため我々は、放射光や実験室系のX線を用いて未知構造解析を行います。特に、粉末未知構造解析は、原理的に実験から得られる回折情報が単結晶法に比べて少ないことから結晶学の専門的知識が要求されます。実際面白い物性を示す材料は粉末状であることがしばしばあり、粉末未知構造解析法はこれからさらに成熟していくべき研究領域であります。また、全散乱法とEXAFSによるアモルファス相の研究も新たに始め、固体の構造研究をマクロからナノサイズまで横断的に行います。


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