岡田・福原研究室│東京工業大学理学院化学系

研究内容

エアロゾル水滴の分光法と界面化学

エアロゾル(エーロゾル)が気温などの大気環境に与える影響は長年にわたり議論されてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書技術要約「TS.2.2気候システムの駆動要因の変化」の項目の 記述によると、気候への影響因子のうち科学的確信度が中程度のもの低いものとして、ブラックカーボンによる光学効果や、ラジカルの存在量や関連する化学変化、などの項目が挙げられている。 高い相対湿度での水滴内無機塩濃度など確信度の高い情報を足がかりに、水滴中のカーボン粒子の光学挙動や、水滴中のラジカル反応など、解明すべき基礎化学過程が多く存在する。
単一エアロゾル水滴トラップ法 電気力学天秤(EDB)法により、直径10ミクロン程度の水滴をトラップし、各種分光計測を行う装置を開発しています。

液面振動(表面張力波:capillary wave)の自発共鳴に基づく光学的表面張力測定 表面張力は液体の物理化学特性を表す。界面活性の化学種が吸着することで表面張力が低下する現象を利用して、界面への化学種の局在を議論できる。われわれのグループでは、表面張力波が自発共鳴を起こす現象を独自に発見し、それを利用した光散乱測定法である準弾性光散乱法(Quasi-elastic light scattering, QELS)法を開発した。液滴の液面を通過したレーザー光に含まれる散乱光のドップラーシフトを検出して、球面型共鳴モードの振動数から表面張力を求めることができる手法である。


参考文献

 

 

1) 火原彰秀, "微小サイズ液体の光学的表面張力測定法", 分析化学, 72(3), 79-86 (2023). https://doi.org/10.2116/bunsekikagaku.72.79
2)

Gen, M., Hibara, A., Phung, P.N., Miyazaki, Y., Mochida, M.:
In Situ Surface Tension Measurement of Deliquesced Aerosol Particles.
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Endo, T., Ishikawa, K., Fukuyama, M., Uraoka, M., Ishizaka, S., Hibara, A.:
Spherical Spontaneous Capillary-Wave Resonance on Optically Trapped Aerosol Droplet.
J. Phys. Chem. C. 122, 20684-20690 (2018). https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.8b03784